今年も1日目のプレス優先日が終わる頃に25作品のはほぼ全てが稼働している状態で作品を期日までに仕上げるという事はできるようになりつつ有ると感じました。また出場校も常連ばかりではなく、138件の書類審査をくぐり抜けられる企画力をつけた大学が増えたました。さらにサークル参加も増えていて、VRを研究する人の広がりが見えてきました。
一方で配線固定方法など連続稼働に必要なノウハウは、新規参入が増えたということでテコ入れが必要かもしれない、という状況も垣間見られました。(プロトタイプ審査なので機構の作りが甘いのは普通なのですが)
もう一点、書類審査でも言える事なのですが「物理」は大事です。思い込みじゃなくてちゃんと体験を計算しましょう。そのうえで実現可能にするために(人間の特性を鑑みながら)省くのです。わかって省くのと、間違った物理なのは大きくちがいます。前者はVR実装としての発見ですが、後者は単なる手抜きです。
敵キャラが発射する攻撃を、避けるという3D弾幕ゲーム。単純明快に楽しめます。プレイ後、自分の様子を再生して見る事ができます。
メカ要素がほぼない、VRコンテンツの作品と言えます。敵キャラがCGではなく実写取の写真なのは、自プレイ確認動画の中で、自分と敵キャラの描画の質が一致するという意味で良い演出だと思いました。が、変態的なまで先進的なVRが出ているIVRCの中では、既視感があるのは否めなかったです。
黒ひげ危機一発の黒髭の気分(自分が刺される)を味わうゲーム。
黒髭のたるを刺すと、対応した自分の腹がぐいぐいつつかれます。黒髭をとばすと、500mLペットボトルのおもりが滑車をつかって自分を僅かにひきあげてくれます。同時に目の前の映像がビデオシースルーHMDで見ていた現実から宇宙の画像に切り替わるという演出です。つつくのが連動しているというだけでは、物足りないと感じて飛び出す演出をつけたのでしょうが、結果としては500mLでは飛んだ感無い・映像の切り替わりが唐突で飛んだ感無い、と言ったところで、蛇足な感じがしました。
高い一輪車にのっている感覚を体験できる装置です。乗っている最中にドンドン一輪車が高くなります。
サドルと一輪車本体は繋がっておらず、サドルはシーソー状態になっていて、車輪は前後に動くようになっています。厳密な物理を考えなくても、車輪の移動量とCGの効果だけで高さの変化を表現できるというもくろみだったそうですが、残念ながら高さの変化を感じるのは難しかったです。ただ、体験した際は機械の故障で一部人力で行っていたので、人力フィードバックの精度の問題の可能性は捨てきれません。
自分の顔面を自分で登る作品
目の前に現れる巨大な顔を登ると、自分の顔に取り付けた振動モータが対応して動くことで、何かが自分の顔を登っていると感じさせます。上の黒ひげ同様、自分で自分に何かするという伝統カテゴリ。ただ、振動が捕まれている感覚になるのか?というとそうではなく、記号的な表現に留まっていたのが残念でした。(IVRCでは過去に虫HOWなど、がっつり捕まれる感覚などが既に取り組まれている)
月のウサギと餅つきといった、マンガっぽい世界の餅つきを体験
つき込んだときの柔らかさをスライムで表現し、もちのくっつきを鉄粉入り袋を磁石でもちあげることで再現していました。もちの伸びる量は引っ張りバネを固定する紐の長さを変化させることで実現。
本物の餅つきの感覚ではないが、アニメやCGの世界でみかける「この餅偉いのびよるな〜」的なほんわかした餅つきをうまく表現していました。タイミングよく餅をつくというゲーム演出はあったが、アニメっぽい餅がつける!ってだけでIVRC的には十分な訴求力があったと感じました。(ちなみに、作品名は当日はHey!お餅 に変わってた)
体内に生き物を飼って、お腹をなでてペットとコミュニケーションを取ろうという作品。
お腹に複数の圧力センサーがついており、撫でたり、押したりすると、ペットが喜んだり怒ったりします。その表情は振動と鳴き声で示しますが、パターンとして現れる振動・鳴き声とのインタラクションでは生命感があまり感じられなかったのが残念でした。聴診器のような装置で、お腹の中を覗く機能もありましたが、これが必要であったかは個人的には疑問でした。自分の中に生命がいるというテーマはMummy Tummy等さまざまに試されている領域なので現在のIVRCにおいては深く突っ込んだ開発が必要になってしまっています。
Dの字になった、輪っかを指の周りでまわすと、指の周りで物体が回っている感じがするという装置。それを使ってペン回しでペンが指の周りをまわっている感じを出しています。
指のサイズに綺麗にあうと、本当に何か硬くてつるつるしたものが指のまわりを回っている感覚になりますし、指から指にペンが渡る時に、回転している位置が綺麗に引き継げないという矛盾があるのに、その矛盾に気がつく事は無いというのは、よく出来ている装置だと思います。本作品とは直接関係ないですが、面白い発見としては輪っかが緩すぎたりして、うまく取り付けられてないと指を魚か何かにしゃぶられているような感覚に陥るというのが関係ないけど面白かったです。そっちの未来も見てみたいですね。
自分が蚊になって、女の子の血を吸って、最期にはパチンと殺されてしまう体験ゲーム
ハンモックに横になって、飛んでいる感じを表現するというのはIVRCでの定番。飛ぶ方向は自分で決められないので、周りを見回す事ができるものの自動的に飛ぶ感じとなっています。血を吸う際にはストローがのびて下にあるコップ刺さるようになっています。このストローの制御で今は吸える、吸えないというのを制御しています(ストローが短いときは吸っても空振り)。入っているのは血ではなくオレンジジュース。自動飛行の後なので、自分が吸っているのか吸わされているのかが微妙なのが難点だと思いました。あまり本質ではないですが、頑張って吸っている最中に、いきなり上部から枕がおちてくると、わらけてしまうという点では個人的に気に入りました。
逆上がりのVR。踏みきりと鉄棒の引きのつよさに応じて、成功していれば一回転できます。
鉄棒の引き、踏みきりの強さともに圧力センサーで取っています。ハンモックに座っていても自然に逆上がりの動作ができるという点は良かったです。ただ、HMDで見える世界の回転中心と鉄棒の位置が乖離している事が鉄棒の描写でばれてしまうのが残念でした。CGから鉄棒の描写を隠せば多少はごまかせたのかもしれないですね。
湿疹の画像と微弱な電気刺激でかゆみを生じさせる作品。
映像の寄与はよくわからなかったですが、うまい具合に電極をあてると神経にあたるのか、皮膚表面にチリチリとした感覚を感じる事ができました。その場所を探り当てるのは、体験者自身でないと難しいので、かゆみを感じれなかった人も多かったかとは思います。体験者に熟練が必要です。
何も見えない、砂の中をかきわけて進み、エサの臭いのする方向に向かって進むゲーム。
安易に視覚に頼らない点はすごく好きです。臭いのON/OFFの速度が速い点は良いと感じました。エアー配管の途中にごま油とティッシュを入れた小瓶を通すことで臭いをつけていました。土をかきわける感覚を提示するために、本物の砂を入れた上で、流行を取り入れてかポンプで空気を送り流動砂化してありました。しかし流動砂化しっぱなしなのであれば、パウダービーズでもよかったのかもしれないです(砂は管理が大変)。
ジェット水流をボードの下から吹き出して空を飛ぶマリンスポーツである、フライボードのVR。
フワフワと飛ぶという意味では、定番のテーマ。左右のスロットルレバーで飛ぶ方向をかえると、それに応じて土台のエアクッションに入る空気量が変わって、土台が傾きます。またエアクッションの上で不安定なのでバランスを取る必要があります、最初コケそうになりますがすぐに慣れて美味く乗れるようになるといった難易度の設定は良かったと思います。しかしレバーのON/OFFで高さ・向きが変わるだけなので、操縦している感じが少なく、載せられている感があるのは少し残念に感じました。
お腹で食べる感覚を味わう作品です。体を前後にゆらして咀嚼し、仰向けになることで嚥下を行います。
ベストには、下腹部にボールが回るタイプのマッサージ器と上部に振動をつたえるためのスピーカーがついています。この手の振動を伝える装置は人にぴったりあてがうのが難しいとされていますが、この動きとのベストの設計があいまって、アゴの骨をお腹で動かしているような感覚がちゃんと味わえました。嚥下もしっかりと振動スピーカーが密着して嚥下感がありました。咀嚼っぽい動きだし、嚥下っぽい動きだし、さらに振動スピーカー・マッサージボールの性能を引き出す動きだし、といった非常に考えられた体験だったと思います。ただ、マッサージボールは人によっては強く当たって痛いかもしれないです、私はちょっと痛かったです。
ONE PIECEのルフィのように腕がのびる感じが得られる作品。
下腕に取り付けられた弓状の装置で、腕表面の皮膚を引き延ばすことで、伸びている感じを出していました。納得性の高い伸び方をしていたのが印象的でした。CGでは腕は単調に伸びますが、皮膚引き延ばしは2段階で行われます。理由は引き延ばされた感覚はすぐ慣れるので、長時間提示するには一旦OFFにしてもう一度延ばし直す必要があるとの事でした(CGも2段階にしちゃってよかったのかも??)。もう一つ装置には腕が伸びると同時に飛び出すおもり付スライドレールがあります。手の慣性モーメントが増えるのを表現しているとの事でしたが、このおもりかが効いているのかはよくわからなかったです。
街中に立体的に張り巡らせたレールの上を滑る作品
足の裏を回転するチェーンで撫でてレールの上を薄いスリッパ一つで滑っている感じを出していました。当たりがマイルドだけれども、十分滑っている振動感はありました。またレールの曲率にあわせてチェーンの向きが変わる機構が搭載されていますが、そこまでの違いは私の足裏ではわからなかったです。滑る体験中はレールのカーブにあわせて体を大きく傾ける必要があります(傾きはkinectで撮影して判定)。しかし実際のレール滑りを考えると、カーブ中もレールに向かっては真下に重力が掛かってるはず。といった矛盾があり操作の理解が自然とは言えず慣れが必要でした。スケボーもそうですが、人間って右にいくぞって思っても単純に右に倒れるわけじゃないんですね。皆苦労する所です。
手のうごきと足の動きをいれかえて、歩くという作品。
コツをつかめばちゃんと前進できます。バランスを取って歩いているというよりも、どちらかというとクロールしているような感覚です(手にスピーカーによる触覚があるので地面を蹴った感はある)。この点は本人たちも自覚していて、立つ所まで入れると習得に時間がかかりすぎて体験が成り立たないので、コケてる状態でも地面をければ歩いたという事にしてるという事でした。この動作パターンなら歩く距離かせげるぞ!っといった新しい動きを学習する楽しさを感じる事ができて、楽しかったです。あと筋トレになりました。
ジャーマンスープレックスをかける・かけられる体験ができる装置
結論から言うと技をかけられる方は楽しかったです。体を任せると座椅子が倒れて後ろに投げられます。実際には90度しか動かないのに画像は180度回転する点はよく考えられていると思いました。技をかける側が、人間であることで一体感が生まれ楽しいのですが、技をかける側はHMDの画像があるとはいえ、箱を持ち上げるだけなので雰囲気的にサポート役なのかなという感じでした。
体が錆びていく感じを体験する装置
自分の体に連動してCGの体(ロボ風)が動くが、次第にその動きが遅れてきます。そうなると人は自分の体が重くなった(だるくなった)との錯覚します。その錯覚を利用した作品です。ちゃんと自分の体が重くのろくなったと感じます。途中で潤滑油をまくと回復するので、何度でも錆びゆく(=重くなる)体験ができます。その他にプロテクターや、鉄板と磁石がしこまれた床にくっつく靴などの工夫がありましたが、どちらかというと、錆を表現しているというよりも、CGの中のロボットに感情移入しやすくなるといった程度の効果に個人手的には感じました。その意味で、自分が錆びるというよりも自分の外装が錆びると感じていたのかもしれません。
遊園地のコーヒーカップを体験できるマシン。
コーヒーカップを回すと、座面が傾き遠心力を演出し、さらに回転の速度を上げ下げするときは背中やお尻が横にスライドして加速感を得られるという装置でした。しかし残念ながら私が体験したときは座面の皮膚をひっぱる感覚は動いてなくて、そのため座面の傾斜と映像でしかコーヒーカップを体験できませんでした。座面の傾きによる遠心力表現は自然に感じる事ができたとおもいます。
一見ゲロゲロに酔ってしまいそうなVR装置ですた、実際には全然酔わないです(意外な発見)。この点でVRのほうが現実のコーヒーカップよりも良いなと思いますし、現実より部分的にマイルドな体験にするための遊園地ライドとしてのVRの魅力があるのかもしれないなと思いました。
左右に足をふることで海の中を進みます。首筋を冷やすことと、振動モータで水流感を表現してるとの事でした。ただ振動モータについては説明されないとそれと気が付かず、やや記号的な使われ方をしているのかな?という印象でした。また移動方向は視線方向(HMDの向き)を利用していました。多くのHMD作品のお約束ではありますが、そのお約束との体験の整合性は一度立ち止まって考えるべきだという事に気が付かされる作品でもありました。
うらしま太郎になって、亀の背中につかまってダイビングし、竜宮城で泳ぎまわって、体験後には自分が老人になった顔をみるという体験。
色々詰め込み過ぎて体験している自分が何をみるべきか見失う感じがしました。
体験の大部分は泳ぎ回る所でした。泳ぎ方は寝転んだまま両手で水を搔くというもので、寝転んだままの姿勢で竜宮城を泳ぐのは違和感ありました。しかし冷静に考えて、水中なのでリアル竜宮城があったらやっぱり寝そべって泳いでいるのかもしれないですね。
ピンボールのフリッパーになってピンボールをプレイします
一言でいうと、安直に楽しい!腹筋に来る!といった感じです。踵につけた距離センサ(PSD)で足の上げ量をみてフリッパーを動かすだけのシンプルな構成です。ボールがあたると足につけた振動モータも震えますが、必死で足をふってると意外と気が付かないです。フリッパー視点なのでボールが見えづらいですが、そこは好き付きだと思います。今回は外野が「いまくるよ!」とか言ってくれて、近くだけ見えるスイカ割り的な楽しさがありました。外野がいないときは、もう少し全景がみえるコースのほうが良いのかもしれません。。
カードで召喚した物体をぐりぐり捻る事ができる装置。
ルービックキューブが6面あるので6つの方向で物体を捻る事ができます。例えばミクさんを召喚して、髪の毛だったり首だったりを捻るといった事ができます。捻った時の反力を提示する装置はよくできており、消しゴムを捻ったようなムニュッとした感じや、積まれた岩をねじったゴリゴリとした感覚が出せていました。ただし、パキパキっといった硬い表現はモーターの都合でできないとの事でした。カードで召喚する意味までは理解出来ませんでしたが、捻っている感覚は楽しめました。
ビジュアルと臭いを上書きすることで、コオロギをエビ風味にするという作品
エビのビジュアルというよりも、バラエティ番組でありがちな、●による隠蔽な感じで、エビの絵がかかれた目隠しが表示されるというものでした。臭いは食べる直前まではエビの臭いですが、口の中にはいると若干土臭い臭いがしました(本来の臭いは外気経由の臭いでは上書きできない)。ゲテモノ飲食系でよくある、食べる直前までは拒否感あるけど食べてしまえばなんの事は無い。という体験の「直前部分」をうまく消していると感じました。本人達が言っていた通り、昆虫食などへの世界的な食シフトの際に最初の訓練として有りなのかもしれないです。
自分の左手から血を吸う感覚を味わえる作品
牛乳にストローからの電気刺激を足して血のような味にしています(舌先を電気刺激すると金属のような味がする)。個人的には旨み成分というか味っけが足りなく感じたんですが、牛乳が冷えていたせいかもしれないです。冷たい血なんて味わった事ないですからね。あと、低周波治療器でゴクゴクのまれてる感を左腕に生じさせます。体験するまでは意味ないかと思ってたんですが、体験してみると吸ってる感あります。脇役にみえて、けっこう重要な機構でした。